信用金庫の恥辱

 昨年度あたりから、信用金庫の情報開示誌(デスクロージャ誌)に総代会制度についての解説が始まって、新しい傾向を見ることができる。 信用金庫そのものが、昭和26年(1951年)6月15日の信用金庫法及び信用金庫法施行令公布施行からと54年も前から創設されているのに、なぜ今頃になって総代会(最高議決機関))の説明なのか。 そこには、信用金庫制度の崩壊を招きかねない重大な欠陥が見え隠れしている。 そこには経営陣の保身に都合が良い規定があり、それに例え気付いていたとしても、表面化させることなく今日に至っているのが実情だ。都市銀行消費者金融の会社を抱きこんで一般消費者への攻勢を強め、地方銀行も地域への密着を進行させる中、地域に根ざして迎え撃つ信用金庫に、大きな欠陥が露呈しつつあるのだ。 本来、会員組織である信用金庫に一般会員からの声が届かず、役員達も一般会員の知らぬ間に決められ、予算、決算も一般会員が選んだ覚えの無い総代が承認していることは、歴代信用金庫の堕落を招き、日本金融界の大きな火薬庫となっている。 その火種を消すためにとられた、情報開示誌(デスクロージャ誌)の新しい傾向と見てとれるが、効果のほどは疑問だ。
 日新信用金庫 2005年 デスクロージャ誌より
 総代会 「にっしん」は、会員同士の相互信頼と互恵の精神を基本理念とし、会員一人一人の意見を大切にする協同組織金融機関です。 会員は出資口数に関係なく、一人一票の議決権を持ち、総会を通じて「にっしん」の経営に参加することになります。 総会は、決算、取扱業務の決定、理事・監事の選任など重要事項を決議する「にっしん」の最高意思決定機関です。 ただ、「にっしん」の会員数は3万人を超え、総会の開催は事実上不可能です。    
     そこで、会員の中から総代を選び、これらの総代で構成する総代会をもって総会に代える制度を採用しています。
     総代は、会員を代表することとなりますから、会員のうちから公平に選任されなければなりません。
     「にっしん」の定款で、総代の定数は100人以上130人以内、また任期は3年と定めています。 総代は、「にっしん」の営業区域を6つの選任区域に分けて、それぞれの選任区域内の会員数を考慮して割り振られています。
     総代選任手続き 地区を6区の選任区域に分け、各選任区域ごとに総代数を定める。 理事会の議決により、選任区域ごとに会員のうちから選考委員を委嘱。 選考委員の氏名を店頭に掲示。 選考委員が総代候補者を選考。
     総代選考基準 1.金庫の理念・使命をよく理解し、金庫の発展に寄与できる者。
            2.人格・見識にすぐれ、良識をもって正しい判断ができる者。 
            3.地域における信望の厚い者。
            4.80歳未満である者、また法人総代にあっては重任10期を超えない者。 
 事例定款は後日に譲るが、ここまでの説明では、一般の会員が
総代候補になる得る機会は無い。 総代選考委員が理事会の議決
で委嘱される限り、選考には理事会の意向が強く反映され、出資
者であっても一般会員が総代選考の対象になり得ない。 出資を
した株主であっても、総代になり得ない時代遅れの組織、それが
信用金庫なのである。「会員同士の相互信頼と互恵の精神を基本理
念とし、会員一人一人の意見を大切にする協同組織金融機関です。
会員は出資口数に関係なく、一人一票の議決権を持ち、総会を通
じて「にっしん」の経営に参加することになります。」なんてこと
はウソパチなんです。 保守的と見られ勝ちな農業協同組合でも
組合員が多くて総代制が採用されているが、選任区域の定員以上
に立候補者があった場合に備えて総代選挙規定が整備されている。
 総代選考後の異議申立制度もあるが、問題は出資した一般会員
が総代選考の対象になり得るのか、どうか。 保身に努める理事
会の意向が反映されている選考委員会で、果たして公平さが保た
れるのか。 理事会の意向を汲んだ選考委員、そこで選ばれた総代、
その総代会で承認された理事役員と決算。 役員自らの保身だけ
を目的に作られた定款。 最高議決機関である総代会を波乱なく
済ませたい役員理事。 そこには一般会員が出資した権利が保証
されていない。 超時代遅れの信用金庫に未来はあるのか。  
 そこで素朴な疑問が湧く。 出資を行い、会員になった場合、総代になって総代会に出席し、議決権を行使することは可能なのか。
 個人株主の台頭が目立ち、モノ言う株主が出資者の権利を行使して株主総会の活性化が図られる今日、信用金庫への出資者に、総会(総代会)への道は開かれているのか。 出資者の権利は認められるのか。 そこで、一寸の虫にもある五分の根性を発揮して、自力で起こした裁判記録を公開(一部省略)するが、新しい展望が開ける手助けになれば幸いである。
 信用金庫では、一般会員は例え出資者であろうと、自由な意思で自ら総代になることが不可能である。 会員が出資者(株主)でありながら、出資者が自らの会員企業の運営に口出しもできない時代遅れの信用金庫は、物言う株主が主流なる現代、単に会員数が多いからの理由で出資者を締め出せば、遅かれ早かれ会員が逃げ出すに違いない。 出資をしているのに、その出資先へモノも言えない規定が続くことで信用金庫の堕落は継続されてきて、今や根本的に改革しなければ存在理由さえ失うこととなるだろう。 これまで、貸付条件で出資させ、会員数を増やしてきたが、そのツケが回り、会員の声を無視できなくなりつつある。 理事会から委嘱された選考委員会で選考された総代が、果たして会員の代表と言えるのか。
詳しくは別紙、事例定款及び裁判記録に委ねるが、ブログに慣れず、高齢でもあるので、分割連載となるがご了承賜りたい。 尚、疲れた日は随時休ませて頂きます。 ご意見の向きは「reinishio@sirius.ocn.ne.jp」まで。
 参考ホームページ  http://www16.ocn.ne.jp/~nishio/